イチゴの病気と予防対策を解説

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家庭菜園で人気があり、初心者でも育てやすいといわれているイチゴですが、栽培を成功させる上で重要になってくるのが病気対策です。

イチゴにはかかりやすい病気がいくつか存在し、多くの収穫や美味しいイチゴ作りをするためには、病気に合わせた防除対策をしなければなりません。

この記事では、イチゴの代表的な病気の種類やその特徴、発生条件や発病時の症状、効果的な予防対策について解説していきます。

これからイチゴ作りを始めようと考えている人は、ぜひこの記事を参考にして、イチゴの栽培に役立ててください。

イチゴの代表的な病気の種類

イチゴの代表的な病気の種類

イチゴ栽培における、代表的な病気について紹介します。

作物栽培時の病害に関して、不安に感じている人も多いでしょう。

しかし、どんな病気でも、病害を最小限に抑えるための予防対策があります。

適切な予防や対処をするためにも、まずは病気についてしっかり知識を身につけておきましょう。

イチゴ栽培で注意すべき主な病気は、以下の3つです。

  • うどんこ病
  • 炭疽病
  • 灰色カビ病

それぞれどのような病気か解説していくので、チェックしてみてください。

具体的な症状や予防対策についても、後述していきます。

うどんこ病

うどんこ病は、果菜類を含む多くの農作物に発生する病害で、イチゴ栽培の際に気をつけなければならない病気の1つです。

露地栽培の場合は発生しないケースが多いですが、ハウスでの促成栽培においては多く発生します。

発生直後に作物の生育に大きな影響を与えるわけではありません。

ただし、うどんこ病が果実に発生すると商品価値がなくなり、出荷はできなくなります。

病原菌はカビの1種である子のう菌類です。胞子が飛散して感染が拡大します。

感染が拡大すると、葉の1面が白い粉状の菌そうに覆われ、光線透過と光合成が妨げられるため、生育が抑制されて果実も大きく育ちません。

放置して感染が拡大すると、手に負えない状態になってしまうので、適切な予防対策をしっかりするようにしましょう。

炭疽病

炭疽病は、うどんこ病と同様にイチゴ栽培における重要病害の1つで、病原菌が2種類あります。

病原菌は、あらゆる部位に感染して発病するシングラータと、葉のふちから枯れ込みが発生するアキュテイタムがあり、大多数の炭疽病の原因となるのがシングラータです。

伝染経路は、見た目が健全でありながら潜在的に感染している親株によるものと、病気にかかった茎葉やランナーの菌が土中に残って感染するケースの2通りです。

いずれも水滴伝染で、雨や水やりなどの水はねにより、菌の分生子(無性胞子)が飛散して感染します。

しおれや枯死を発生させ、収穫が激減する場合もあるので、しっかり防除対策をしなければなりません。

灰色カビ病

灰色カビ病は、イチゴ栽培で発生する病害の中でも、事前の対策が重要になります。

カビの1種である糸状菌によって引き起こされますが、作物の組織内に寄生するので、伝染源が目で確認できません。

菌核は土中での越年が可能で、翌年の伝染源になってしまいます。

イチゴの場合は収穫期に発病しやすいです。下葉などの壊死した部分や傷口から菌が侵入して葉や葉柄、がくなど全ての部位に発病しますが、多くは果実に発病します。

果肉の内部を腐らせる病気で、重度になると完全に腐って食べられません。茎の内部までカビが入ると、水を吸い上げられなくなるので、上部が枯死する場合もあります。

発病の早期発見とすみやかな対処が重要となるほか、さまざまな予防対策があるので、事前にしっかり理解しておきましょう。

うどんこ病について

うどんこ病について

うどんこ病は、多湿環境でも乾燥環境でも発生しやすく、主に春や秋、ハウス栽培であれば冬でも発生します。

これは、病原菌である子のう菌類の胞子の発芽適温が、20℃程度のためです。

胞子の発芽は低温下でも進みます。胞子の活動が抑制されるのは、主に育苗期間に当たる夏期のみです。

実際にどのような症状が見られるのか、また、予防対策について後述していくので、参考にしてください。

うどんこ病の症状

うどんこ病の症状について紹介していきます。

うどんこ病は初期防除が大切なので、発病時の症状について知っておきましょう。

  • 下葉に赤褐色の斑点ができる(初期段階)
  • 葉の裏面に白いカビが発生する
  • 葉が丸くカールする
  • つぼみに発生すると花びらが紫紅色になる
  • 果実にカビが発生する

白いカビは病名の通り、うどん粉をかけたような見た目で、葉や果実、葉柄や果梗、つぼみに発生します。

葉に発病した際は、先行してつぼみに症状が見られる場合があるので、つぼみもしっかり観察するようにしてください。

果実に発生すると肥大が抑制され、汚れも残り、成熟後の果色も悪く、味も低下します。

うどんこ病の予防対策

うどんこ病の効果的な予防対策についてまとめたので、参考にしてください。

うどんこ病は、発生して感染が拡大すると対処が困難になるので、以下の方法を実践して未然に発病を防ぎましょう。

  • 畝の水はけを良くして土壌や株に適度な水分を含ませる
  • 風通しを良くするために株間を広く取る
  • 日当たりの良い場所で育てて株の抵抗力を高める
  • 肥料は株の様子を見ながら与えすぎないよう注意する
  • 伝染源となるので発病果は見つけたらすぐに除去して畑の外で処分する
  • 促成栽培時は育苗期間から薬剤で定期的に予防散布する

初期段階での防除が重要なうどんこ病は、初期症状の感染を発見した場合は、重曹や水で薄めた木酢液や酢を散布して治療ができます。

細かいケアの積み重ねになりますが、いずれも簡単にできる予防方法なので、徹底して予防に努めましょう。

炭疽病について

炭疽病について

2種類の病原菌によって発生する炭疽病は、6〜9月に発生し、特に高温多湿が続く7〜8月に発生の多い病害です。

生育適温はアキュテイタムが25℃前後、シングラータが28℃前後で、高温下で症状が急速に進行します。

過湿環境であれば、20℃くらいでも病症が確認できるため、温室栽培やハウス栽培の場合は、換気などで湿度低減の工夫をしなければなりません。

アキュテイタムよりも、シングラータによって発病した方が、被害が大きいです。

病原菌ごとにみられる症状や、予防対策について詳しく解説していくので、参考にしてください。

炭疽病の症状

炭疽病は、葉柄やランナーに生じる黒色の陥没した病斑で判別可能ですが、発病時の葉は病原菌によって見られる症状が異なります。

シングラータによる発病の場合は、葉に直径2〜3mmの淡墨色〜黒色のほくろ状の病斑が発生しますが、アキュテイタムの場合、葉に現れるのは黒色の不整形の大型病斑です。

ほかの斑点性病害と区別する特徴としては、多湿条件で病斑上に形成されるサーモンピンクの胞子塊です。

胞子塊は、簡易診断の指標でもあります。ビニール袋に水を含ませたティッシュペーパーと検定葉を入れ、28℃で2週間静置した後、胞子塊の有無を確認して診断が可能です。

シングラータに感染した株は、衰えてしおれる(萎ちょう)場合が多く、萎ちょうした株はクラウン外部から内部に向かって褐色化・腐敗が進み、ひどい場合は枯死します。

葉枯れ炭疽病とも呼ばれるアキュテイタムによる発病は、葉や葉柄、ランナーに病斑が発生し、最終的に葉枯れ症状になるのが特徴です。

アキュテイタムは、シングラータより株の萎ちょうや枯死は起きにくいものの、果実に発生すると黄色いくぼみの病斑が見られる実腐症状を起こす場合があります。

炭疽病の予防対策

炭疽病の予防対策について紹介していくので、参考にしてください。

炭疽病の病原菌の胞子は水を介して飛散するので、水はねや水やり時の対策方法について理解しておくのが大切です。

  • 植え付け前に親株を観察し生育不良株を使用しない
  • 育苗期間は夕方や曇天時の長時間の水やりをさけて茎葉の濡れ時間を長くしない
  • 雨よけや高設育苗の栽培時も風雨による水はねに気をつける
  • かん水は水はねの少ないドリップチューブや水圧の低い散水チューブを使う
  • 窒素質肥料の過度な使用はさける
  • 植え付け前に畑の土壌消毒を行う
  • 前作に使用した資材は農業資材用の薬剤で洗浄するか新しいものに交換する
  • 気温が20℃を超える時期を目安に予防散布する
  • 風雨で発病が助長されるため雨の後は重点的に薬剤防除する
  • 耐性菌の発生を防ぐため薬剤散布は同系統の連用をせずにローテーションで散布する

感染を広げないためにも、発病株や発病箇所を見つけた際はすみやかに除去して、ビニール袋に入れて完全に枯れるまで密閉して処分しましょう。

前作で発生した場合は、親株床や仮植床に菌が残っている可能性があるので、連作はおすすめできません。連作をさけられない場合は、土壌消毒や予防散布をしっかりするようにしましょう。

灰色カビ病について

灰色カビ病について

灰色カビ病は、12〜4月頃の温室栽培やハウス栽培での発生が多いです。

20℃前後が発病の適温で、多湿条件で発生するため、自然条件では春や秋に発生しやすく、真夏や真冬は発生しにくくなります。

加温や保温により作物の生育を早める促成栽培時は、ハウスを閉め切っていると真冬でも発生するので、注意が必要です。

朝夕が急激に冷え込む時期も、果実や葉に結露が生じるため、発病しやすくなります。

灰色カビ病が発病した際の症状や、予防対策について解説していくので、参考にしてください。

灰色カビ病の症状

灰色カビ病は、伝染源が作物の組織内に寄生する病気ですが、発病した際の判別は難しくありません。

病名の通り、イチゴの実に灰色か黒色のカビが付着していたら、灰色カビ病と判断できます。

主に果実に発生し、葉や茎、花に発生する場合もありますが、実以外の箇所に発生している時はその何倍ものカビが実に付着しているでしょう。

がくと果実の間から発生するケースが多いです。

初期の段階では、周囲が黒っぽい緑色の細長い斑点ができ、時間の経過により病斑部に灰白色〜褐色のカビが生じ、その後密生していきます。

灰色カビ病の予防対策

灰色カビ病は、感染した部位の適切な除去のほか、風通しの良い環境を整えるのが予防対策として有効です。

多湿条件で胞子が拡散しやすくなるので、茂りすぎた下葉の除去や、密植にならないよう株間を空けて植え付けをしましょう。

そのほか、以下のような予防対策が効果的です。

  • 多湿にならないよう水やりは必要最小限にとどめる
  • マルチングで土壌からの病原菌の伝染を防ぐ
  • 予防剤を主体に早い時期から定期的に系統の異なる薬剤をローテーション散布する
  • 枯死した葉や落果した実などはすみやかに畑の外で適切に処分する

灰色カビ病の病原菌の胞子は、空中飛散や土壌から伝染するので、予防対策として地域の防除歴を確認しておくのもおすすめします。

まとめ

苺

イチゴ栽培におけるうどんこ病や炭疽病、灰色カビ病の予防で大切なのは、感染源を畑に持ち込まないことと、胞子が飛散しない環境作りです。

病原菌がカビなので、近隣からの胞子の空中飛散など、完璧な予防は難しいかもしれませんが、親株を購入する際などは注意して入手しましょう。

肥料のあげすぎにも充分注意してください。

窒素成分を含む肥料のあげすぎは、うどんこ病や炭疽病の発病を助長させます。

また、肥料を与えすぎた株は、かえって軟弱になってしまい病気にかかりやすいです。

発病してしまっても、発病部位や発病株を適切に除去できれば、感染の拡大を防げます。

畑から感染源を適切に排除するのも、持ち込まないのと同様に重要です。

安全で美味しいイチゴを育てるためにも、発病していないかこまめに観察し、栽培に最適な環境作りに努めましょう。