若い新規就農者がテレビなどで取り上げられる昨今、セカンドキャリアやスローライフの生計の主軸として、農業への注目が高まっています。
とはいえ、これから農業を始めようと考えている人の中には、安定して稼げるか不安に感じる人もいるでしょう。
農家は、経営体形や育てる作物によって収入に大きな差があります。年収が1,000万円以上の農家がある一方で、ほとんど儲けがないと言う農家も珍しくありません。
この記事では、さまざまな農家の平均年収や地域別の年収ランキング、稼げる作物のランキングや農業で稼ぐためのコツについて紹介していきます。
新規就農を検討している人はぜひ読んでみてください。
農家の平均年収と地域別年収ランキング
農家の平均年収や地域ごとの年収ランキングについてまとめました。
農業に興味があって、年収が気になると言う人は参考にしてください。
北海道農政事務所の平成30年の経営統計によると、全国の農家の個別経営1経営体当たりの年収は510.8万円で、そのうち農業所得(農業だけの純利益)は174.1万円でした。
農家は主業か副業かの経営体によっても、年収(総所得)に違いがあり、多くの農家は農業所得に加え、農外所得(兼業の自営業の収入など)や年金などで収入を得ています。
同年の経営体ごとの年収も紹介するので、こちらもチェックしてみてください。
年収 | うち農業所得 | |
主業経営体 | 800.7万円 | 661.6万円 |
準主業経営体 | 557.9万円 | 41.7万円 |
副業的経営体 | 425.5万円 | 56.5万円 |
また、農家の年収は地域によっても違いが生じます。
地域別農家年収ランキング
平成30年の農家の年収を、地域別でランキングにしました。
どの地域の農家が、高い年収を得ているか気になると言う人は参考にしてください。
- 北海道…1095万(うち農業所得950万円)
- 九州…565万(うち農業所得234万円)
- 関東…561万(うち農業所得191万)
- 東海…544万(うち農業所得116万)
- 北陸…528万(うち農業所得93万)
- 近畿…436万(うち農業所得101万)
- 東北…435万(うち農業所得153万)
- 中国…407万(うち農業所得52万)
- 四国…394万(うち農業所得135万)
- 沖縄…192万(うち農業所得86万円)
(参考元 : 各地域の農政局・北海道農政事務所・沖縄総合事務局農林水産物の平成30年の農業経営統計および農業経営収支より)
北海道は、総所得だけでなく農業所得でも1位です。農業所得の割合が高いのも、畜産業が盛んな点と、広大な面積を利用できる専業農家が多いためでしょう。
農業所得だけなら、東北や四国も、ランキング上位3地域に次いで所得額が高いです。
都道府県別農業産出額ランキング
年収に関わる補足情報として、都道府県ごとの農業産出額ランキングを紹介します。
農業の盛んな地区は、農業コミュニテイや販路が充実している傾向にあるので、農業で稼ぎたい人は、お住いの都道府県が農業に強いか把握しておくことも大切です。
令和3年の統計から、耕種の農業産出額の上位10位までを紹介するので参考にしてください。
- 北海道(5,456億円)
- 茨城県(2,822億円)
- 千葉県(2,375億円)
- 長野県(2,333億円)
- 青森県(2,330億円)
- 熊本県(2,135億円)
- 愛知県(2,076億円)
- 山形県(1,943億円)
- 新潟県(1,754億円)
- 鹿児島県(1,580億円)
(参考元 : e-Stat 令和3年生産農業所得統計[年次別農業総産出額及び生産農業所得:実額])
1位は、地域別年収ランキングでも1位の北海道が圧倒的な産出額で獲得しています。
ほかの県も、地域別で上位の九州や関東、東海や北陸の県などです。
東北は地域別では7位ですが、農業所得では4位なので、青森県や山形県の農業産出が反映されているといえるでしょう。
農作物の作物別年収と特徴
農作物の作物別年収と特徴について解説していきます。
農業は農作物によって粗収益や農業所得に違いがあり、営農類型別においても違いが見られるので、区分ごとの収入や特徴について理解しておきましょう。
今回は耕種農業に属する、以下の主な4種類の農家の年収と特徴を紹介します。
- 米農家
- 畑作農家
- 露地野菜農家
- 施設野菜農家
参考資料は、農林水産省の、営農類型別経営統計の令和3年の調査結果です。
全農業経営体で全国の1経営当たりの経営統計で、農外所得や年金、総所得を含まないので、作物の区分ごとの平均年収として参考にしてください。
米農家の平均年収と特徴
米農家は、ほかの農家と比べると利益が出にくい傾向にあるのが特徴です。
米作りには、トラクターや田植え機など、農業機械に高額な経費がかかるため、農地の規模によっては利益にならない場合もあります。
令和3年に関しては、米の消費が落ち込み、農林水産省が産地に需要に見合う生産を促していた年で、農業所得は前年の17.9万円から1.0万円に落ち込みました。
農業粗収益 | 農業経営費 | 農業所得 |
350.3 万円 | 349.3万円 | 1.0万円 |
ただ、米農家は経営規模によって収益や経費に大きな差が生じるため、全国の統計からは実際の年収を想定しにくいかもしれません。副業的な小規模農家による「稲作単一経営」も多く、所得の少ない米農家のデータも、統計に反映されているためです。
主業経営体で20ha以上の作付け延べ面積での単一経営であれば、農業所得が1,000万円を超えているケースも珍しくありません。
畑作農家の平均年収と特徴
畑作農家は耕種の農業事業体の中では、農業所得を比較的安定して得られるのが特徴です。
農業粗収益 | 農業経営費 | 農業所得 |
1317.0万円 | 1049.7万円 | 267.3万円 |
畑作では、六条大麦やトウモロコシ、豆類やイモ類などを栽培しますが、栽培した農作物の加工販売も畑作経営に含まれます。
二毛作や二期作などで農地を有効に活用できれば、収入を増やせるのも畑作の大きな特徴です。
ただし、天候の影響を受けやすいため、気象災害や災害による不作に備えておく必要があります。基本的には広大な農地を使用しての農業なので、デメリットについてもしっかり対策を考えておかなければなりません。
露地野菜農家の年収と特徴
露地野菜農家は施設野菜農家と似た品目を育てますが、農業所得は施設野菜農家の約半分程度になります。
農業粗収益 | 農業経営費 | 農業所得 |
1083.4万円 | 899.9万円 | 183.5万円 |
露地栽培は天候や気候の影響を受けるため、土地の気候や土壌、季節に合わせて育てられる野菜が限られてくるためです。また、鳥害や天候によって収穫量が不安定になりやすいため、卸業者が施設野菜を好むという理由もあります。
安定した収入、また高収入を目指すのであれば、計画性や柔軟な対応力が求められるでしょう。ただし、初期投資が少なく済むので、始めやすいというメリットがあります。
作付述べ面積を増やせば農業取得を上げられるので、露地野菜農家で高収入を目指すのであれば、農地の確保を検討しましょう。
施設野菜農家の年収
営農類型の区分で、農業所得が安定して高いのが施設野菜農家です。
農業粗収益 | 農業経営費 | 農業所得 |
1738.6万円 | 1368.3万円 | 370.3万円 |
施設野菜は天候の影響を受けにくく、気温を調整すれば年間を通して作物を栽培できるので、収入が安定しやすくなります。
年収が安定しやすい反面、ほかの農家よりも栽培や管理に手間がかかり、設備の導入や維持管理費用など経費がかさむのも施設野菜農家の特徴です。
かかる経費をしっかり把握して、コストの削減や育てる野菜の収益性などを考慮すれば、平均より高い年収も目指せるでしょう。
これから始める稼げる作物ランキング
これから農業を始めようと考えている人のために、路地野菜と施設野菜で、それぞれ稼げる作物のランキングを紹介していきます。
路地野菜と施設野菜は、全国新規就農相談センターの令和3年の新規参入後の就農調査で、販売金額第1位の経営作目で共に3割を超えており、新規就農に最適な作目です。
今回は、農林水産省が平成19年に最後に行った品目別経営統計の調査を元に、10a当たりの経営収支で、農業所得の高い順にランキングにして紹介します。
農業を始めようと考えていて、どの農作物を育てるか悩んでいる人は、1つの目安として参考にしてみてください。
露地野菜
露地野菜の稼げる作物ランキングについて紹介します。
初期投資の少ない路地野菜での新規参入を検討している人はチェックしてみてください。
農業粗収益 | 農業経営費 | 農業所得 | ||
1位 | ししとう | 200.5万円 | 57.7万円 | 142.8万円 |
2位 | なす | 180.3万円 | 57.7万円 | 122.6万円 |
3位 | きゅうり | 177.3万円 | 58.8万円 | 119.5万円 |
4位 | 大玉トマト | 154.0万円 | 63.7万円 | 90.3万円 |
5位 | ピーマン | 142.7万円 | 53.2万円 | 89.5万円 |
最も農業所得が高かったのは、ししとうでした。
ただし、ししとうは比較的労働時間を必要とするため、収益性についても理解しておいた方が良いでしょう。
これから始めるのであれば、初心者でも育てやすく、収益性の良い3位のきゅうりもおすすめです。
施設野菜
施設野菜の稼げる作物ランキングについて紹介します。
小規模でも利益を出せる作物もあるので、小規模から農業にチャレンジしてみたいという人はチェックしてみてください。
農業粗収益 | 農業経営費 | 農業所得 | ||
1位 | ミニトマト | 407.1万円 | 204.3万円 | 202.8万円 |
2位 | イチゴ | 359.6万円 | 169.8万円 | 189.8万円 |
3位 | なす | 351.4万円 | 182.0万円 | 169.4万円 |
4位 | ししとう | 375.9万円 | 229.6万円 | 146.3万円 |
5位 | きゅうり | 243.0万円 | 108.6万円 | 134.4万円 |
1位は、現在でも儲かる農業のビジネスモデルとして扱われているミニトマトです。
露地栽培の場合は、収穫時期の7〜10月に作業が集中するミニトマトですが、仕事量の調整が可能な施設栽培は繁忙期を分散でき、生産量の落ちる冬に高値で販売ができます。
高値で販売できる点であれば、市場価格の高い2位のイチゴも、小規模経営で高い利益を出せるのでおすすめです。
農家で稼ぐためのコツ
農家として安定した年収を目指すのであれば、稼ぐためのコツをおさえておきましょう。
農業を営むその土地で、売れる作物や栽培に適した作物を知るのも大事ですが、作物の収益性や販売方法の工夫を考えるのも大切です。
これから就農を考えている人は、以下の2つのポイントをおさえておいてください。
- コストが低い農作物を選ぶ
- 出荷できない作物を利用&加工して販売
上記のポイントについて、それぞれ具体的に解説していきます。
コストが低い農作物を選ぶ
農家として稼ぎを出したいのなら、コストが比較的かからない農作物を育てるのがおすすめです。
農業は、粗収益だけを見るとそれなりの収入が入ってくるように見えますが、収益の大半は経費に回すことになります。
仮に粗収益が1,000万円に達したとしても、経費に900万円かかってしまったら、年収は100万円にしかなりません。一方で、粗収益が500万円でも、経費が150万円ですめば、年収は350万円になります。
収益や経費は年によって変動するので難しい面もありますが、どのくらいの経費が必要になるのかしっかり計算して、より利益を出せる農作物を選びましょう。
また、作物ごとに推計できる所得から時給換算して、収益性の高い野菜を選ぶのも年収アップに効果的なのでおすすめします。
出荷できない作物を利用&加工して販売
出荷できない農作物をただ廃棄してしまうだけでなく、有効に利用するのも大切です。
農作物は、ほとんどの産地で出荷規格が設定されており、病害虫や傷害などの品位基準に満たないものや、大小基準を満たしていないものも出荷対象から外されます。
規格外野菜は、家族や従業員にあげてはける程度であれば、大きな問題ではありません。
台風などにより規格外の作物が多く発生した場合は、規格不選別で買い取ってもらえる業者に売ったり、畑にすき込んで土作りに活用したりして無駄を失くしましょう。
また、生産した農作物は、加工して販売できればそのまま売るだけよりもリスクの分散ができます。加工ができれば、保存期間を延ばして販売時期を調整できる上、付加価値をつけられれば、高値での販売も可能です。
加工食品の製造に使用する機材や作業場、加工や販売をするための免許は必要になりますが、経営の安定につながるので、ぜひ検討してみてください。
小規模な土地で軽量な作物がオススメ
農業を始める、または農業経営を考えている人は、小規模な土地で軽量な作物から始めるのがおすすめです。
いきなり大きな規模から始めるのは、災害時や不作時の損害リスクがあるため、初心者にはおすすめしません。広大な農地の確保は、初期費用の負担にもなります。
大規模な農業を目指すとしても、始めのうちは小規模な農業からノウハウを積み重ね、どの程度の収益や労力になるのか、確認しながら進めていくのが良いでしょう。
特に女性や、セカンドキャリアとして50〜60代で農業を始める人にとっては、収穫した大量の作物を運ぶのもそれなりに重労働です。
軽量な作物から無理なくスタートした方が、農業を継続するモチベーションも維持しやすくなります。
【新規就農】新規就農おすすめ農業
新規就農におすすめの農業についてまとめました。
それぞれのメリットなども一緒に紹介するので、新規就農を考えている人は参考にしてみてください。
作物 | 新規就農するメリット |
ミニトマト | 乾燥した地域でも育てやすく高単価での販売が可能 |
きゅうり | 栽培から収穫までの期間が短く収益性が高い |
イチゴ | 小規模から始められ市場での価格が高く安定した収益を出しやすい |
このほか、露地栽培で年中収穫できる小松菜やほうれん草、比較的手間がかからないアスパラガスや枝豆など、初心者向けの作物はさまざまあります。
どのような作物を育ててみたいか、また、どのくらいの規模から始めるかなども考慮した上で、取り組みやすい農業から始めてみるのがおすすめです。
相談は椿産業
新規就農でイチゴ栽培や小規模経営を考えている人は、ぜひ椿産業にご相談ください。
椿産業では、新規就農でも低コストで手軽に始められる栽培システムを提供しています。
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労働負荷を大幅に軽減し、高品質かつ高い生産性を維持できる栽培システムなので、安定した収入を無理なく目指せます。
トマトの袋栽培やごぼうの栽培などにも活用できるシステムなので、小規模での新規就農を検討している人は、お気軽に椿産業にお問い合わせください。
まとめ
農業で安定した収入を得るには、どの農作物がどれだけの利益を出せるか、また利益を出すためにどのような工夫が有効かを知ることが大切です。
作物別のランキングで、農業所得を比較しても、1位と5位で50〜60万程度の差が生じます。高額な粗収益が見込める農作物なら、可能な限りコストをおさえるだけでも、その分年収をアップできるでしょう。
農業コミュニティや農業相談なども活用して、就農に有益な情報もしっかり集めてください。特定の作物栽培のプロに相談するのも有効的な手段です。
最新の情報やプロのアドバイスを上手に活用して、安定した年収を目指せる農業を始めましょう。