農業で起業する場合、基本的には初期費用がかかります。
農地はもちろん、苗や肥料、農機具なども必要です。
そこで今回は、農業の起業にかかる初期費用について解説します。
合わせて、農業で使える補助金についても解説するので、これから農業で起業しようと検討している人は参考にしてください。
ほとんどのケースで初期費用がかかります。
新規就農前に抑えておきたいポイント
まずは、新規就農前に知っておくべき費用について理解しておきましょう。
重要なポイントとしては、以下の2つです。
- 作物で初期費用や年収が変わる
- 運用費用も考慮して初期費用を試算
農業といっても作物はさまざまで、初期費用も異なります。
以下で具体的に解説するので、起業に備えて予算を用意しておきましょう。
作物で初期費用や年収が変わる
農業は作物によって初期費用や年収は大きく異なります。
目安の年収は以下のとおりです。
- 米農家…農業所得56万円
- 畑作農家…農業所得286万円
- 露地野菜農家…農業所得245万円
- 施設野菜農家…農業所得508万円
- 果樹農家…農業所得254万円
- 花き農家…農業所得:露地/266万円・施設/443万円
また、作物によってはビニールハウスを用意しなければいけなかったり必要な農機具が変わってきたりするため、用意すべき初期費用が異なります。
運用費用も考慮して初期費用を試算
農業で起業すると、運用費用もかかります。
就農1年でかかる平均の運用費用は、以下のとおりです。
- 水稲…約100万円
- 施設野菜…約184万円
- 果樹…約120万円
どのような作物でも、平均150万円はかかるので、最低限初期費用として150万円以上は必要だと考えておきましょう。
農業に必要な初期費用
農業に必要な初期費用は、主に以下の5つです。
- 農地
- 苗・肥料
- 農機具
- 設備購入
- 運営・生活防衛資金
それぞれをどの程度用意しておくべきか、以下で解説します。
農地
まず農家を始めるのに必要なのが、農地取得費用です。
「2016年度新規就農者の就農実態に関する調査結果」の後追い調査である「新規参入者の経営資源の確保に関する調査結果」によると、農地購入代金総額の平均は171.5万円とされています。
しかし、実際には50万円未満と回答した人も多いので、農地取得費用については地域などによっても異なり、それほど負担にならないケースもあるでしょう。
苗・肥料
農業を始めるには、苗や肥料も必要です。
苗や肥料に費用をかけられなければ、順調に作物を育てることはできません。
そのほか、燃料などもかかります。
それぞれにかかる費用の平均は145万円と言われていますが、農家の広さによっても異なるので、あらかじめ具体的なシミュレーションをしておきましょう。
農機具
育てる作物によっても異なりますが、農機具にかかる費用の平均は388万円です。
トラクターなどの大きな機械が必要になるため、どうしても金額は大きくなってしまいます。
農業の初期費用のなかでも最も金額が高いので、費用負担は大きいと言えるでしょう。
しかし、必要な農機具も作物によって異なるため、作物を選べば費用負担を抑えられます。
設備購入
作物によっては、農機具のほかに設備の購入も必要になるケースがあります。
たとえば、柵や作物を保存しておく倉庫などです。
設備については、土地の広さや何を揃えるかによって費用が変わるので、一概にいくらとは言えません。
初期費用を抑えるには、事前に本当に必要な設備をしっかり検討しておく必要があります。
運営・生活防衛資金
初期費用として忘れずに用意しておきたいのが、運営費や生活防衛資金です。
農業で生計を立てるには、安定して収益を得るまでの間の生活資金も考えておかなければいけません。
また、農業で安定した収益を得るまでには時間がかかるので、何かあったときのための生活防衛資金も必要です。
一概にいくらあれば良いとは言い切れませんが、年間で150万~200万円を用意しておくと良いでしょう。
新規就農の資金調達方法
新規就農をする際の資金調達をする方法は、自己資金以外にもいくつかあります。
主な資金調達方法は、以下の4つです。
- 金融機関
- 日本政策金融公庫
- JAの農業融資
- クラウドファンディング
以下では、それぞれの資金調達方法の特徴について解説します。
金融機関
最も一般的な資金調達方法が、金融機関からの融資です。
選ぶ商品によって異なりますが、金融機関からの融資であれば多額の資金調達ができる可能性もあります。
しかし、以下のようなデメリットもあります。
- 利子が高いケースがある
- 審査に時間がかかる(約1カ月)
- 事業計画書や計画書が必要
- 審査が厳しい
特別に多額の資金が必要でなければ、あえて金融機関を選ぶ必要はないでしょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、 事業に取組む方々等を支援する政策金融機関です。
中小企業がメインではあるものの、個人事業者や農業経営者などを支援するための融資も行っています。
金利も安く審査期間も短い上に、金融機関と比べれば審査のハードルは低いです。
金融機関で資金調達できなかった人でも、日本政策金融公庫であれば審査に通る可能性があります。
JAの農業融資
JAは、農業従事者を対象とした金融サービスを提供しています。
資金調達だけではなく農業経営についても相談できるので、とくに初心者におすすめです。
金利は無利子~0.8%程度で、審査期間は1カ月ほど。
審査については多少厳しいものの、銀行と比べるとハードルが低いです。
相談しながら資金調達を進めていきたい人に向いています。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを使い、目的を達成するために不特定多数から資金を調達する方法です。
昨今では、農業に限らない新しい資金調達方法として注目されています。
出資してもらえる金額はクラウドファンディングの設定によってさまざまですが、一人あたり数百円や数千円からでも出資可能です。
ただし、出資者には「リターン」と呼ばれる商品やサービスを返さなければいけません。
また、出資者にとって魅力的な内容やリターンでなければ目的の金額に達成できないケースがあります。
就農者向け補助金制度
自己資金と資金調達を使っても資金が用意できない場合は、各機関が実施している補助金制度も活用しましょう。
以下では、主な2つの補助金制度を紹介するので、農業を始める際にぜひ利用を検討してください。
農業次世代人材投資資金
農業次世代人材投資資金は、国が新規就農者を支援する制度です。
就農準備資金と経営開始資金の2種類があり、それぞれの具体的な概要は以下のとおりです。
就農準備資金 | 経営開始資金 | |
補助金額 | 道府県農業大学校や先進農家などで研修を受ける場合、研修期間中に月12.5万円を最長2年間 | 農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12.5万円を交付 |
主な要件 | ・就農予定時の年齢が、原則49歳以下であること ・独立・自営就農、雇用就農又は親元での就農を目指すこと -独立・自営就農を目指す者については、就農後5年以内に認定農業者又は認定新規就農者になること -親元就農を目指す者については、就農後5年以内に経営を継承する、農業法人の共同経営者になる又は独立・自営就農し、認定農業者又は認定新規就農者になること ・都道府県等が認めた研修機関・先進農家・先進農業法人で概ね1年以上(1年につき概ね1,200時間以上)研修すること ・常勤の雇用契約を締結していないこと ・生活保護、求職者支援制度など、生活費を支給する国の他の事業と重複受給でないこと ・申請時の前年の世帯全体(親子及び配偶者の範囲)の所得が原則600万円以下であること ・研修中の怪我等に備えて傷害保険に加入すること | ・就農時の年齢が、原則49歳以下の認定新規就農者であること ・独立・自営就農であること -農地の所有権又は利用権を交付対象者が有していること -主要な機械・施設を交付対象者が所有又は借りていること -生産物や生産資材等を交付対象者の名義で出荷又は取引すること -経営収支を交付対象者の名義の通帳及び帳簿で管理すること -交付対象者が農業経営に関する主宰権を有していること ・親等の経営の全部又は一部を継承する場合には、継承する農業経営に従事してから5年以内に継承し、かつ新規参入者と同等の経営リスク(新規作目の導入や経営の多角化等)を負うと市町村に認められること ・就農する市町村の「目標地図」に位置づけられていること(見込みも可)、「 人・農地プラン 」に中心経営体として位置づけられていること(見込みも可)、又は農地中間管理機構から農地を借り受けていること ・生活保護等、生活費を支給する国の他の事業と重複受給していないこと ・また雇用就農資金による助成金の交付又は経営継承 ・発展支援事業による補助金の交付を現に受けておらず、かつ過去に受けていないこと ・申請時及び交付期間中の前年の世帯全体(親子及び配偶者の範囲)の所得が原則600万円以下であること |
(引用元:就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)|農林水産省)
青年等就農資金
青年等就農資金は、JAバンクと日本政策金融公庫で実施している制度融資で、無利子で資金を借りられます。
概要は、以下のとおりです。
利用対象 | 市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人・法人 |
資金の使い道 | ・施設・機械 ・果樹・家畜・借地料などの一括払い・その他資材費など |
融資条件 | ・返済期間…17年以内・融資限度額…3,700万円・利率…無利子・担保…融資対象物件・保証人…原則として個人の場合は不要、法人の場合で必要な場合は代表者のみ |
(引用元:青年等就農資金|日本政策金融公庫)
就農前に相談
農家で起業するにあたって資金以外の不安を抱えている場合は、相談先がいくつかあります。
代表的な相談先は、以下の2つです。
- JA 新規就農研修
- 農林水産省 新規就農の促進
それぞれでどのようなサポートを行ってくれるのか、以下で解説します。
JA 新規就農研修
JAの新規就農研修では、以下2つのステージを用意しています。
- 研修ステージ
- 就農・定着ステージ
研修ステージでは、農業生産法人や受入農家で農業技術の習得から研修管理面までの研修を受けられます。
カリキュラムに沿って行われるので、イチから農業を始める方にもおすすめです。
農林水産省 新規就農の促進
農林水産省では、新規就農者をサポートする取り組みを展開しています。
主な取り組みは、以下のとおりです。
- 農業ポータルサイト
- 農業に関するハンドブック
上記の2つでは、農業が初めての人に向けた基礎的な知識から、相談窓口などの情報も掲載されています。
イチゴ農業・高設栽培のことなら椿産業
農業で起業をする場合は、初期費用や相談先などを事前に考えておきましょう。
今まで農業をしてこなった人が、一人だけで起業するのはハードルが高いです。
新規就農をサポートしている機関も多くあるので、まずは一度相談してみてください。
また、イチゴ農業や高設栽培については椿産業にお任せください。
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