農家になるのに年齢は関係ありません。
半数以上の人が50代から農家になっています。
しかし、当然農家になるのに知識は必要です。
今回は、「農家になるのにどのような知識が必要になるのか」「資格は必要なのか」について解説します。
農家になるには
農家のなり方には、大きく分けて2つあります。
- 雇用就農
- 新規就農
それぞれの違いは、自分で起業するか雇われて農家で働くかの違いです。
以下で、具体的な違いについて解説します。
雇用就農
雇用就農は、農業法人などで従業員として働き、給与をもらうスタイルです。
あくまで従業員として勤務するので、一般企業に勤めるサラリーマンと同じような雇用の形と考えて良いでしょう。
雇用就農は、スキルや技術を学べる上に、初期費用がかからないので、安定している働き方と言えます。
今後、農業で独立を考えているのであれば、通っておいて損のない道でしょう。
ただし、いわゆるスローライフのような働き方ではありません。
新規就農
新規就農は、自ら起業して農家を始めるスタイルです。
いわゆるスローライフを送るという考えであれば、新規就農の道になるでしょう。
しかし、農業と言っても起業することに変わりはないので、経営者としての考え方が必要になります。
そのため、農作物を育てる他、販路の開拓や拡大、人員の確保、営業活動なども考えなければいけません。
さらに、起業するとなれば、初期費用もかかるので、デメリットは多いと言えるでしょう。
ただし、ある程度軌道にのってしまえば、自分のペースで農家を運営できます。
農家に経歴・資格は必要なし
農家を始めるにあたって、必要な経歴や資格はありません。
以下の資格を取得しておくと有利ですが、必要なものではないので、時間があれば取得しておきましょう。
- 日本農業技術検定
- 農業機械士
- 毒物劇物取扱者
- 危険物取扱者
- 農業簿記検定
- 産業用マルチローターオペレーター技能認定
ただし、必須ではありません。
実際にこれまで農業に携わっていなかった人でも農家になれますし、農業に関する資格を持っていない人でも農家になれます。
しかし、農業を始めるには、以下の2つは抑えておくべきです。
- 地域・組合とのコミュニケーション
- 普通自動車免許と大型特殊免許
なぜそれぞれが必要になるのか、以下で解説します。
地域、組合とのコミュニケーションが必要
農家を始める際には、コミュニケーション力が重要になります。
人を雇う場合であれば、当然従業員とのコミュニケーションが必要になりますし、販路拡大を行う際には、交渉力が必要です。
また、地域のイベントなどは販路拡大の大きなきっかけになるので、地域の方とのコミュニケーションも大事にしなければいけません。
さらに、組合とのコミュニケーションも大事です。
組合とのコミュニケーションを深めておけば、何かしら困ったときに支えてくれます。
上記のように、農家を始めるには様々な人との交流が必要になるので、コミュニケーション力は磨いておくようにしましょう。
普通自動車免許と大型特殊免許
農家を始めるにあたって資格は必要ないと解説しましたが、運転免許は必要です。
まず、運搬や移動のために「普通自動車免許」は必要不可欠になります。
さらに、規模によっては、トラクターやコンバインなどの農業機械を運転するための「大型特殊自動車運転免許」も必要です。
大型特殊自動車運転免許は、JAや農業大学校で免許を取得する方法があり、3日程度の研修で取得できます。
新規就農に必要なもの
新規就農するためには、必要なものを揃えておかなければいけません。
雇用就農でない限り、農業に必要なものはすべて自分で揃える必要があります。
なかでも、まず考えておくべきものは、以下の3つです。
- 農地
- 初期費用と1年分の生活費
- 作物、栽培の知識
「場所もない、費用もない、知識もない」という状態では、農家を始められません。
以下で、なぜそれぞれが必要になるのかについて解説します。
農地
まず第一に確保しなければいけないのが、農地です。
当然ですが、農家を始めるには、場所を確保しておかなければいけません。
また、ただただ空いている場所を確保するだけではなく、日照や水の状況、栽培したい作物に適している土地を選ばなければいけないのです。
さらに、農地は、農業の売買や賃借を行うにあたり、農地法などの様々な法律に定められた手続きが必要になります。
もし農地選びについてわからない場合は、市町村の農業員会に相談するのも一つの方法です。
場合によっては引っ越しを検討しなければならないので、ご家族がいる場合は、慎重に検討しましょう。
初期費用と1年分の生活費
農家を始めるためには、ある程度の資金も必要です。
農業は0円で始められるビジネスではありません。
ビニールハウスや設備など、初期費用がかかります。
育てる作物によっても異なりますが、基本的には以下のものを揃えなければいけません。
- 農地
- 農機具
- ビニールハウス
たとえば、トラクターを購入する場合は、安いものでも100万円以上、高額なものだと500万円以上のトラクターもあります。
その他にも、ビニールハウスに、種や肥料の購入費、光熱費なども必要です。
また、種を植えてから収穫するまでには時間がかかるので、約1年分の生活費もあった方が良いでしょう。
実際にどの位の初期費用がかかるかは作物によって異なりますが、生活費も合わせると1,000万円以上は必要だと考えておいてください。
作物、栽培の知識
農家を始めるにあたって、資格や経歴は必要ないと解説しましたが、最低限の知識は必要です。
農業は、ただ植えれば育つものではなく、天候や地質なども関わってくるので、土や肥料についての知識や経験が必要になります。
農業の専門の大学や高校があるほどなので、知識ゼロの状態では、まず上手くいかないと考えて良いでしょう。
ただ、農業専門の学校に行っていないからといって、農家になれないわけではありません。
農作物を育てるノウハウや農業経営学などをしっかり学んでおけば、後からでも知識はつけられます。
まずはある程度知識をつけたい場合は「日本農業技術検定」の資格を取得するために勉強したり、雇用就農で知識を学んだりしてから独立を目指しましょう。
新規就農に年齢は関係ある?
経験や資格が必要ないように、農家になるのに年齢は関係ありません。
実際にどの位の年齢層が新規就農をしているのか、農林水産省のデータを元に解説します。
50歳以上から農業を始める人が半数
農林水産省による「令和3年新規就農者調査結果」によると、令和3年の新規自営業就農者の年齢層は、以下のように分かれています。
- 49歳以下…19.5%
- 50歳以上…80.5%
反対に、新規雇用就農者数の結果は、以下のとおりです。
- 49歳以下…73.8%
- 50歳以上…26.2%
上記のように、新規雇用就農者は49歳以下が多く、新規自営業就農者は50
歳以上が多い結果となっています。
また、新規自営業就農者に関しては、ここ最近で50歳以上が増えたのではなく、これまでも50歳以上が多いです。
過去数年間の新規自営業就農者数の推移を見ていきましょう。
年度 | 全体の数(千人) | 49歳以下(千人) | 50~59歳(千人) | 60歳以上(千人) |
平成29年 | 41.5 | 10.1 | 7.1 | 24.3 |
平成30年 | 42.8 | 9.9 | 5.9 | 27.0 |
令和元年 | 42.7 | 9.2 | 10.5 | 23.1 |
令和2年 | 40.1 | 8.4 | 5.6 | 26.0 |
令和3年 | 36.9 | 7.2 | 3.9 | 25.8 |
全体的な人数は少なくなってる傾向ですが、いずれも50歳以上が多いです。
とくに60代から新規自営業就農者として起業している人が多くいるので、若さや年齢は関係ないと言えます。
新規就農の前に農業の仕事を体験しよう
新規就農は、知識も資格もない状態では、難しいと言えます。
しかし、今から学校へ通ったり雇用就農で知識を蓄えたりするのは難しいと感じる人もいるでしょう。
そんな方は、全国新就農相談センターで体験をする方法があります。
全国新規就農相談センターで農業体験
全国新規就農相談センターは、文字どおり、新規就農の相談に乗ってくれる窓口です。
対談・オンライン・電話・メールなどで相談可能で、年間2,265件の相談に乗っていると言われています。
また、相談だけではなく、農業体験プログラムも用意しています。
体験プログラム3つの体験内容は、以下のとおりです。
【農業インターンシップ】
- 稲作…わらまき・肥料まき・水管理・稲刈り・乾燥調整・精米・配達
- 野菜…種まき・育苗・定植・ホルモン処理・箱づくリ・収穫・包装・出荷・トンネル張り・マルチ張り・ハウスの建設
- 果樹…袋取り・収穫・箱詰め・(観光農園の)接客・ビニール被覆
- 花き…土入れ・種まき・移植・芽かき・挿し木・芽接ぎ・ハウス管理・除草剤散布・市場での仕入れ・出荷・配送
- きのこ…菌接種・温室管理
- 酪農…搾乳・飼料調整・給餌・哺乳・分娩立ち会い・除糞・ブラッシング
- 肉用牛…給餌・去勢・治療・体重測定・出荷・子牛の導入・除糞
- 養豚…分娩舎での子豚管理・分娩処理・除糞・出荷
- 農作業以外の研修内容…社会生活のマナー・レストランの手伝い・試験場・選果・近隣農家の見学・台風対策とその片付け・ビニールハウスの解体組立 等
【就農準備校で農業体験】
プログラム | 短期農業体験コース | 中期農業研修 | 農業実践 |
期間 | 5日間、3日間、1日間のいずれか | 1ヶ月 | 3ヶ月 |
研修内容 | 稲作・野菜・畜産・ 農産加工から1部門のみ選択(5日間は2部門) | 稲作・野菜・畜産・ 農産加工から1部門のみ選択 | 稲作・野菜・畜産・ 農産加工から1部門のみ選択(5日間は2部門) |
上記の他、農業体験の募集情報を検索できるメニューもあります。
募集情報一覧は、以下のページから項目を選択して検索可能です。
https://www.be-farmer.jp/farm_experience_recruitments/
農家に興味を持ったら農業専門家に相談しよう
農家に興味を持ったら、ゼロから自分で始めるのではなく、農業の専門家に相談しましょう。
農業は経験や資格がなくても始められますが、すべて自分で始めるにはハードルが高いです。
まずは体験や専門家に相談して、知識やスキルを学んでから独立を目指してください。