イチゴ栽培は、ほかの果実と比べると栽培が難しいと言われています。
そのため、年間を通して適切に管理しながら育てていかなければいけません。
そこで今回の記事では、イチゴ栽培の具体的な年間スケジュールについて解説します。
- イチゴ栽培を検討している
- イチゴ栽培で何をすれば良いかわからない
- 農業の進め方がわからない
上記のような農業初心者の方は、参考にしてください。
イチゴ栽培はエリア・品種で時期が異なる
イチゴ栽培でまず知っておかなければいけないのが、収穫時期です。
一般的には5月~6月中旬と言われていますが、収穫できる時期はエリアや品種によって異なります。
品種ごとの収穫時期は、以下のとおりです。
- 紅ほっぺ…1月~5月
- おいCベリー…1月~2月
- 章姫…2月~4月
- とちおとめ…1月~4月
- さちのか…1月~2月
- やよいひめ…2月~4月
- もういっこ…2月~4月
- 桃薫…2月~4月
- よつぼし…1月~5月
- あまおとめ…1月~4月
収穫エリアごとの収穫時期は、以下のとおりです。
- 福岡…1月~3月
- 大阪…1月~5月
- 愛知…2月~4月
- 栃木…12月~5月
- 宮城…1月~6月
あくまで上記は参考ですが、品種やエリアによって大きなズレがあると理解しておきましょう。
イチゴ栽培の年間スケジュール
上記で解説したように、イチゴの収穫スケジュールは品種やエリアによって異なるので、年間スケジュールも品種などによって異なります。
しかし、基本的な作業の流れは変わりません。
以下では、イチゴ栽培の基本的な年間スケジュールを解説します。
苗の入手方法から収穫、次の苗作りまで解説するので、イチゴ農家を始める際の参考にしてください。
9月〜10月(苗の入手・定植)
まず、イチゴの苗を入手して、植え付けます。
その後は一旦休眠状態に入ります。
一般的には11月~12月に深い休眠状態に入り、一定期間低温に当たることで休眠から目覚めます。
休眠中も光合成は行われているので、この頃に栄養分が根に蓄えられていくのです。
12月〜2月(防寒対策・マルチング)
先述したように、休眠したイチゴの株は一定期間低温に当たることで休眠から目覚めます。
このことを「休眠打破」と呼びます。
休眠打破に必要な低温は一般的に5℃以下と言われていますが、品種によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
そして、休眠から目覚めたイチゴ株には、防寒対策(マルチング)を行います。
マルチングというのは、藁やポリフィルムなどを使ってイチゴの株元を覆う方法です。
土の水分蒸発防止や地温の保持などを目的にしており、とくに露地栽培においては欠かせません。
また、氷点下が続くような寒い地域では、イチゴ株の凍結枯死の防止の役割もあります。
3月〜4月(人工授粉)
3月~4月は、イチゴの花が咲き始める頃です。
より確実な収穫のために、開花から3~4日後を目安に人工授粉を行います。
そもそも、イチゴの花のおしべは、開花から2日以降でないと受精できません。
反対に5日を過ぎると、おしべ、めしべともに受精能力が低下してしまうので、3日~4日がベストな時期なのです。
この受粉の方法には、自然受粉と人工授粉があります。
人工授粉とは、名前のとおり人の手による授粉方法です。
主に柔らかい筆や綿棒などを使って、おしべとめしべをまんべんなく撫でて授粉させます。
対して、自然授粉もあります。
自然受粉は、ミツバチなどの虫が花の蜜を吸いにやってくることで、体に付着したおしべの花粉がめしべにくっつき、受粉が行われます。
また、露地栽培の場合は、花粉などによって花同士がこすれて受粉されることもあります。
上記のようにさまざまな受粉方法はありますが、イチゴ農家では人工授粉が基本です。
イチゴの花には100本以上のおしべがついており、このうち受粉しないおしべがあると、果実が十分に肥大しません。
果実のサイズが小さくなったり形がいびつになったりしてしまうために、品質が低下してしまいます。
4月〜7月(収穫)
春から夏の4月~7月になると、イチゴが収穫期を迎えます。
目安としては、開花から30日~40日です。
ただし、エリアや品種によって異なるので、一概にすべてのイチゴが4月~7月になるとは限りません。
また、イチゴを収穫する際は、新鮮であるか成熟しているかどうかを、見た目確認しておきましょう。
わかりやすいポイントとして、イチゴのヘタ部分を確認する方法があります。
ヘタが全体的に外側へ反り返っているイチゴは、収穫時期としてベストタイミングです。
ヘタが反り返っていないものは、少し様子を見た方が良いかもしれません。
もう一つのポイントとして、イチゴの色を確認しておきましょう。
市販のイチゴにもまれに白っぽいイチゴが混ざっている場合がありますが、白い部分が残るイチゴは完熟していない状態です。
そのため、全体的に真っ赤になっているイチゴを収穫するようにしましょう。
しかし、白い部分が混ざったイチゴは、決して食べられないわけではありませんし健康に害があるわけではありません。
これは、気温上昇に合わせた農家側の工夫です。
気温が高くなる春先は株が水をよく吸うため、果実が柔らかくなり棚持ちが悪くなってしまいます。
そのため、ある程度硬さがあるうちに早採りを行っているのです。
ご自宅でイチゴを育てて収穫する場合には、完熟してから収穫した方が良いですが、もし今後イチゴ農家を本格的に始めるのであれば、早採りについても理解しておくと良いでしょう。
6月〜9月(苗作り)
収穫が終わったら、次のシーズン用の苗を作ります。
苗作りの手順を大きく分けると、以下の4ステップです。
- 子株を育てる
- 苗床へ移植
- 管理
- 定植
まずは、子株を育てなければいけません。
健康な株を親株に残し、走りづるの先につく子株を育てて苗にします。
注意点として、親株から1番目の子株を選ばないようにしてください。
1番目の子株は親株から病害伝播の可能性があるからです。
苗として利用するのは、2番目や3番目にしてください。
次に、苗床へ移植していきます。
本葉が3枚~4枚になったところで、親株側の走りづるを切ります。
反対側の走りづるは付け根あたりで切って、根を傷めないように掘り上げてから苗床へ植えつけて育てます。
子株が根付いたところで、走りづるを切り離して育てていきます。
苗床への移植が終わったら、適切な管理が重要です。
基本的には、育ち具合を見ながら株間に追肥を施していきます。
このとき、こまめに下葉をかきとり、新しい葉4本~5本の状態を保つようにすると、風通しが良くなり太くてしっかりした苗に育ちます。
そして、9月・10月に植え付けです。
できあがった苗を畑に植えつけたら、ここまでの工程を繰り返します。
イチゴ病気・害虫にも注意
イチゴ栽培においては、病気や害虫にも注意しなければいけません。
とくに代表的なイチゴの病気として、以下の3つがあります。
病名 | 感染経路 | 症状 | 対策 |
うどんこ病 | カビの1種である子のう菌類 | 生育が抑制されて果実が大きく育たない | ・畝の水はけを良くして土壌や株に適度な水分を含ませる・風通しを良くするために株間を広く取る・日当たりの良い場所で育てて株の抵抗力を高める・肥料は株の様子を見ながら与えすぎないよう注意する・伝染源となるので発病果は見つけたらすぐに除去して畑の外で処分する・促成栽培時は育苗期間から薬剤で定期的に予防散布する |
炭疽病 | ・親株から感染している・病気にかかった茎葉やランナーの菌が土中に残って感染する | しおれや枯死 | ・植え付け前に親株を観察し生育不良株を使用しない・育苗期間は夕方や曇天時の長時間の水やりをさけて茎葉の濡れ時間を長くしない・雨よけや高設育苗の栽培時も風雨による水はねに気をつける・かん水は水はねの少ないドリップチューブや水圧の低い散水チューブを使う・窒素質肥料の過度な使用はさける・植え付け前に畑の土壌消毒を行う・前作に使用した資材は農業資材用の薬剤で洗浄するか新しいものに交換する・気温が20℃を超える時期を目安に予防散布する・風雨で発病が助長されるため雨の後は重点的に薬剤防除する・耐性菌の発生を防ぐため薬剤散布は同系統の連用をせずにローテーションで散布する |
灰色カビ病 | カビの1種である糸状菌 | 果実の内部を腐らせる | ・多湿にならないよう水やりは必要最小限にとどめる・マルチングで土壌からの病原菌の伝染を防ぐ・予防剤を主体に早い時期から定期的に系統の異なる薬剤をローテーション散布する・枯死した葉や落果した実などはすみやかに畑の外で適切に処分する |
害虫については、注意しておくべき害虫が4種類います。
主な症状や対策は、以下のとおりです。
害虫名 | 被害 | 対策 |
ミナミキイロアザミウマ | 作物の葉や茎から汁液を吸い、身を黄色く変色させる | ・周囲の雑草を取り除く・マルチを敷いて株の根本への侵入を防ぐ |
コナガ | 葉の裏から葉の表皮だけ残して食べていく | ・防虫ネットで成虫の産卵を防ぐ |
アブラムシ | 生成の阻害 | ・マルチを敷いて平井を予防・アリを除去してアブラムシの増殖を防ぐ |
ハダニ | 光合成が行えなくなり葉が枯死 | ・マルチを敷く・株の周囲の雑草を除去 |
病気も害虫もイチゴの収穫に大きな被害をもたらすので、事前の対策を必ず行っておきましょう。
イチゴ農業のことは専門家へ相談
イチゴの育て方だけではなく、経営面でも不安がある場合は、専門家へ相談しましょう。
代表的な相談先として、以下の2つがあります。
- JA 新規就農研修
- 農林水産省 新規就農の促進
研修のほか、経営面での相談にものってくれるので、ゼロから農業を行う人は専門家に相談してみましょう。
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